遺言の種類
遺言の方式には普通方式と特別方式の2種類があります。特別方式は、死期が迫っている場合などの特殊な状況下にのみ用いられる例外的な方式です。そのため、一般的に遺言を作成する場合は普通方式が用いられます。 普通方式は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。
特別方式には危急時遺言と隔絶地遺言があります。危急時遺言には一般危急時遺言、難船危急時遺言があり、隔絶地遺言には一般隔絶地遺言、船舶隔絶地遺言があります。これらの方式は、普通方式による遺言が困難な場合において特別に認められた略式の方法であるため、遺言者が普通方式での遺言を作成できるようになったときから6ヶ月間生存していた場合は無効となります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、全文を自分で書く遺言書のことです。簡単で費用もかかりませんが、すべて自筆でなければならないので、代筆やワープロによるものは無効となります。 また、日付の記入がないものや「平成○年△月吉日」のように、日付の特定ができない場合も無効となります。用紙の種類や大きさ、筆記具などは自由ですが、署名と押印は必ず必要になります。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、法務大臣によって任命された公証人に、遺言の趣旨を口頭で述べ、それに基づいて公証人が作成する遺言書のことです。公正証書遺言は、字が書けない方でも作成することができ、公証人という法律の専門家が作成しますので、内容的に不備がありません。 また、遺言書の原本を公証人役場で保管するため、偽造や変造の恐れがありません。 しかし、公正証書遺言の作成には2名以上の証人が必要になりますので、遺言の存在とその内容を、完全に秘密にすることは出来ません。また、手続きが煩雑なうえ、公証人への手数料がかかります。 (手数料は相続財産が多くなるほど高くなります。)
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言書の本文はワープロや代筆によるものでも構いませんが、自らその証書に署名、捺印して封筒に入れ、その印と同じ印で封印を押します。それを持って2名以上の証人と共に公証人役場へ行き、公証人に提出し、封書に遺言者本人、証人、公証人が署名捺印して完成します。しかし、この遺言書は遺言の内容を秘密にできるというメリットはありますが、公証人により遺言の存在を証明してもらった後は、自分で保管しなければいけませんので、紛失や未発見になるおそれがあります。
一般危急時遺言
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫っている者が遺言をしようとするときは、証人として3人以上の立ち会いがあれば、その1人に遺言の趣旨を口授して、緊急時遺言ができます。
難船危急時遺言
船舶遭難の場合において、船舶中に死亡の危急に迫った者は、証人として2人以上の立ち会いがあれば、口頭で遺言をすることができる。
一般隔絶地遺言
伝染病のために行政処分によって交通を断たれた場所にある者は、証人として警察官1人及び1人以上の立ち会いがあれば遺言書を作ることができる。
船舶隔絶地遺言
船舶中に在る者は、証人として船長又は事務員1人及び2人以上の立ち会いがあれば、遺言書を作ることができる。