相続人不存在
被相続人が遺産を残して亡くなった際に、相続人となり得る身寄りが一人もいなかった場合や、相続人はいても相続放棄や相続欠格、相続人廃除等により相続人全員がその資格を失って、遺産を相続する者が存在しないという場合があります。また、戸籍の消失などで相続人の存在、不存在が明らかでない場合もあります。
そのような状態を「相続人不存在」といい、この場合、家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任申立をすることになります。そして、選任された相続財産管理人のもとで清算手続きをすることが必要になります(民法第952条)。
相続財産管理人の選任
相続債権者や特別縁故者など、被相続人に対して利害関係を持つ人、または検察官などの申請によって家庭裁判所で財産の管理人を選任します。
相続財産管理人の選任手続きについては、以下の通りになります。
申立人
利害関係人(相続債権者、特別縁故者など)、検察官
管轄
被相続人の最後の住所地
手数料等
収入印紙800円と郵便切手(裁判所によって異なります)、官報公告料
必要書類
・申立人・相続人の戸籍謄本
・被相続人の除籍謄本、及び出生まで遡った戸籍謄本一式・除票
・相続人全員についての死亡記載のある除籍謄本
・相続人全員が放棄した場合は戸籍謄本と放棄申述受理証明書
・財産管理人候補者の戸籍謄本・住民票
・利害関係を証する資料、相続関係図
・財産目録
相続人捜査の公告
選任された相続財産管理人は、相続財産を管理するとともに、相続人捜査の公告を行います。公告期間は2ヶ月以内となります。
この間に相続人が現れた場合は、財産の引渡しを行います。が、2ヶ月を過ぎても相続人が見つからない場合は、管理人は財産の債権者や遺言による受遺者に対して、相続財産の清算を行うよう公告を出します。
相続財産清算の公告期間が過ぎても相続人が現れなかった場合、家庭裁判所に請求を行って最後の相続人捜索の公告を出します。
それでも相続人が現れなければ、相続人の不存在が確定します。
特別縁故者
相続人の不存在が確定すると、次の段階として「特別縁故者」と呼ばれる人が相続出来る可能性が出てきます。
特別縁故者とは、被相続人と生計を共にしていた人(内縁の妻など)、被相続人の療養看護に努めた人、その他被相続人と特別の縁故があった人のことをいいます。
特別縁故者にあたる人が相続するためには、家庭裁判所に財産の分与の申立てをしなければなりません。申立てにより特別縁故者として認められれば、被相続人の財産の全部あるいは一部が分与されます。
国庫の帰属
相続財産管理人が職務遂行の結果、相続人が見つからず、また債権者や受遺者も存在せず、特別縁故者もいない場合(あるいは特別縁故者が一部を相続したが財産が残った場合)は、被相続人の財産は最終的に国庫に帰属します。