法定離婚事由
民法では、法的に認められる離婚の理由として、「不貞行為」、「悪意の遺棄」、「3年以上の生死不明]」、「回復の見込みのない強度の精神病」、「離婚を継続しがたい重大な事由」の5つが定められています。
不貞行為
法律用語では「夫婦間の守操義務に違反する姦通」と言いますが、ひらたく言えば浮気のことです。
夫婦は原則的に同居し互いの協力の下、円満なる家庭を築かなければならない義務が有ります。それには当然ながらお互いに貞操を守る義務も有します。
この義務に反して一方が不貞行為を行ったという場合には、他方は配偶者の不貞行為を理由に離婚の請求をすることが出来ます。
裁判での不貞行為では、「婚姻関係を破綻させたかどうか」が焦点となります。
悪意の遺棄
結婚・婚姻関係とは、夫婦が共に暮らし、互いに協力しあって生活していくことが定められています。法律用語では、「同居義務、扶助義務」といいます。
「悪意の遺棄」とは、その義務を理由もなく果たさないことを指します。
例えば、夫が家を出たまま長期に渡り帰って来ない。また、生活費を払ってくれないなどがこれに当たります。「理由がない」ということが必要ですので、単身赴任など理由がある場合はこれには当たりません。逆に、「ほかに好きな人が出来たから」という理由などは、理由としては認められません。
3年以上の生死不明
生死不明とは、その人が生きているのか死んでいるのかわからない状態を指します。生存が確かでも所在がわからない場合は「生死不明」に当たりません。
3年の起算点は、最後の消息・音信があった時点です。
3年以上の生死不明を理由にする離婚は、離婚裁判によって決定することが出来ますが、通常、離婚裁判を起こすためには、その前に離婚調停が行われていることが原則です。しかし、生死不明の場合は「相手が既にいない状態」ですから、協議離婚や離婚調停といった夫婦間の合意が必要な離婚が不可能になるため、いきなり離婚裁判を起こす形をとることが認められているのです。
3年以上の生死不明による離婚の例としては、テロ事件に巻き込まれたり、海洋事故にあって行方不明となった場合などがあります。
回復の見込みのない強度の精神病
配偶者が強度の精神病に掛かり、なおかつ回復の見込みがない場合、民法では裁判離婚の原因としてこれを認めています。
強度の精神病とは、夫婦生活の本質的な義務が果たせない状態にあることで、精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準の1級程度の判定が必要かと思われます。
なお、アルコール依存症を理由とされる方もいますが、アルコール依存症は回復の見込みの可能性が高いと判断され、それだけを理由に離婚が認められる可能性は難しくなります。
配偶者がこのような強度の精神病になってしまった場合、精神病の程度と回復の見込みに関して専門医師の鑑定が必要になります。また、程度の問題は直ぐにでも判断が可能な要素ですが、回復の見込みに関してはその病状の経過をみて判断する必要がありますので、ある程度の期間が必要となってきます。さらに、精神病になった配偶者の離婚後の生活に関しての見込みや予定が必要になります。
そもそも結婚生活には、お互いの扶助義務が発生しますので、裁判所では精神病を理由に離婚を認めることに前向きな判例が無いのが現実です。
婚姻を継続しがたい重大な事由
夫婦関係が破綻してその復元の見込みがない場合には、婚姻を継続し難い重大な事由として、離婚原因になることを認められています。離婚調停や離婚訴訟においては多く争われているところであります。
どのようなケースが離婚原因として認められるかは、内容も幅広く、限定されていません。同じようなケースでも離婚が認められる場合と、認められない場合があり、個々の事情において裁判官が総合的に判断します。
主な該当自由
・性格の不一致
・性生活の不一致
・過度の宗教活動
・刑事事件で刑務所に服役
・暴力・暴言・虐待
・配偶者の両親・親族との不和